一言で表現するならば
とにかく「こり」を丁寧にしつこく取っていきます。(*0)。
それにより血流改善 → 痛みの軽減・不調の改善を目指します。
「こり」をとる、ということについては、冒頭で記述した通り余程の特殊が事情がない限り必ず実現できることです。血行不良により過敏になった部位のポリモーダル受容器を正確に刺激することでコリを解消することができます。
たいていの痛みは「こり」が取れることで一緒に痛みが軽減 or 消失します(*1)が、中にはそう一筋縄でいかない症例があります。
まず、明確にしておかないといけないのは、
痛み、特に「慢性痛」は非常に複雑で(*2)、 最先端の現代医学・科学もいまだ「痛み(慢性痛)」の仕組みを完全に理解できているわけではありません(*3)。
ですので、散見される「ここを○○すれば、痛みが消える」、「痛みを根本的な原因から治す」のような、あたかも身体の統一理論を発見したかのような触れ込みは、あまり真摯な態度とは言えず、誠実な施術者ほど、人間の心身の仕組みの奥深さに圧倒されながら、現段階で手に入るエビデンスや経験、直観をもとに、個別の事例ごとにあれこれ苦悩しながら痛みの軽減・除去のために闘っているというのが現状だと思います。
最近では「筋肉」だけではなく、(論者によっては筋肉以上に)「筋膜(筋肉を包んでいる膜)」がとても大事であることが分かってきていますし、 もっと言えば筋肉・筋膜だけでなく、腱、靭帯、関節包、皮膚・皮下組織・浅筋膜、神経上膜…などの線維性結合組織を含んだ Fascia(*4)が痛みや身体の不調において、ものすごく大事であることが分かってきています。
今まで、筋肉組織だけが治療対象となっていて、Fasciaに対するアプローチがなされていなかったことが理由で難治性となっていた痛みも多いと考えられます。
ですので当院では、筋肉のコリそのものに加え、これらの軟部組織(Fascia)における血行不良を解消していく、という事を目的に施術を行っています。
また、いわゆるトリガーポイント(*5)のように関連痛を引き起こすような硬結部位はもちろん 優先的に治療対象としていきますが、それにあまりこだわり過ぎずに周辺の筋硬結はすべて取り除いていく方向で施術を行っています(*6)。
(*0:さまざまは治療院・整体院でパッと目を引くような理論や治療法が提唱されている中で、このような主張は地味過ぎるのは承知していますが、結局のところ、筋・筋膜系を始めとする身体のトラブルは血行不良が大きな原因である事実に鑑みて当院のセントラルドグマとしております。)
(*1:通常の「こり」による痛み、つまり、筋・筋膜性の疼痛、トリガーポイントによる関連痛など)
(*2:侵害受容性慢性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛、あるいは脳の可塑性による疼痛等に加え、個々人の遺伝的体質や生活環境、文化等が…複雑に絡んでいることも多い)
(*3:『痛み学』 熊澤 孝朗など参照)
(*4:Fasciaの概念の定義は現時点ではいまだ一義的に定まっていない状態です。
「筋膜」の意味で使用されたり(これは明らかに誤りですが)することもありますが、おおむね「筋膜・腱・靭帯などの線維性結合組織」という理解でよいと思われます。 )
(*5:トリガーポイントの概念についても近年の生理・病理学的知見を受けて、従来の「部位」ということから「(生理的)状態」を指すように変遷しつつありますが、ここでは従来の「部位」の意味で用いています。参 :『外来 超音波診療』白石吉彦)
(*6:必ずしも、「関連痛を引き起こす」から「悪性度が高い」ということを客観的に意味するわけではないと考えているからです。)
当院においてとても重要な論文
先のK. Lewit氏の論文ともう一つ、川喜田氏によって記された
「針灸刺激の抹消受容機序におけるポリモーダル受容器の役割」(川喜田健司:明治鍼灸医学 第6号:23-35(1990))
です。この2つの論文を核に当院の施術は成り立っています。
鍼(マッサージにおいても同様)がコリや痛みに効くといってもその時何が起こっているのか?という根本的な疑問に答えるものです。日本語で書かれたこの論文に出会ったときは、本当に日本人で良かったと思いました。なんでこんな大事なことを鍼灸の専門学校で教えないのだろう。。。
polymodal_receptors_and_acupuncture_pionts